研究概要 |
本年度では,特異積分方程式を援用した接触移動荷重を受ける表面の損傷機構の解明とその知的検出について,以下のような成果が得られた. (1)特異積分方程式による表面に垂直な三次元表面き裂の解析 三次元表面き裂問題を体積力法の特異積分方程式を厳密に解くことにより解析する方法について検討した.未知関数である体積力対密度を基本密度関数と多項式の積で近似することにより高精度の解析が可能となり,き裂の全面において高い境界条件の満足度が得られた.また,従来の解析手法では困難であったき裂前縁の応力拡大係数の滑らかな分布が得られ,その分布は,き裂形状比が1.0,0.75の場合に自由表面から3°の位置で最大値を示した. (2)傾斜した三次元表面き裂の内部形状の同定解析 き裂周辺のひずみ情報から,物体表面に斜めに入った三次元表面き裂の内部情報,すなわちき裂深さと傾斜角を推定する問題を取扱った.その際,き裂の位置および表面き裂長さは既知であるものとした.また,接触荷重を受けるき裂問題への適用を考慮して,き裂近くの物体表面に集中力を負荷しそれによって生じるひずみ分布を基に,き裂内部情報の推定を行った.き裂周囲のひずみ場は主としてき裂面積に支配されるという表面き裂に対する知見に基づいて,傾斜き裂の内部形状を精度良く同定するアルゴリズムを開発した.また,高精度な同定を行うために,最適な集中力を負荷する位置やひずみデータの数などについて検討を行った.その結果,き裂を挟む2点のみの測定データからでも高精度の同定が可能であることが明らかとなった.
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