研究概要 |
本研究は大きく次の3つの部分で構成される。 1.静的劣化試験:潤滑油の酸化・熱劣化を,空気あるいは純酸素を流入させながらガラス容器中で行わせる.摩擦面での劣化との比較を考慮に入れ,金属表面上にわずかに塗布した潤滑油の劣化試験を同装置を用いて行う. 2.動的劣化試験(転がり四球試験機の適用):摩擦による劣化を行わせる.重要な点は,(1)適切な加速試験により潤滑油の劣化(トライボ劣化)を行わせること,(2)摩擦面の損傷を最小限に押さえつつ潤滑油の劣化を起こさせることの2点である. 3.試料油,および摩擦面の分析:劣化による潤滑油の成分変化,分子量分布変化,摩擦表面での反応生成物の同定等を行う. 本年度は,上記項目2.動的劣化試験および3.試料油の分析に関し,(1)潤滑状態を大幅に悪化させること無く潤滑油を劣化させていくこと,(2)劣化物の分析を精度良く行うためには生成物の濃度が高い,すなわち生成物が多量に試料油中に存在していなければならないため,試料油の使用をできるだけ少なくすること,(3)いかに少量の潤滑油で長時間の安定な摩擦試験を行わせるか,(4)少量の試料油の分析がどこまで可能かを見極めること,を目的として,転がり四球試験機の試作改良,試験方法の検討を主に行った.また,試験後の油の分析方法の確立についても検討を行った.その結果,高荷重で実験を行うと,転がり四球試験でも微細な摩耗粉の発生が認められ,それが潤滑状態を悪化させることが明らかとなり,次年度ではより底荷重下での実験を模索する.試験油の分析では,赤外分光分析器,ゲルクロマトグラフィーにより行うことが出来ることが明かとなった.
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