研究概要 |
本研究は,多孔質含油軸受(多孔質ジャーナル軸受)の寿命を決定する要因の一つである運転時間にともなう軸受内部の含油量の減損率を実験的,理論的に解析すること,さらにこれが潤滑特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 本年度は,実験装置本体を製作するとともに,多孔質体軸受内部の油の減損状況を可視化するために多孔質体部分(軸受内部)をガラスの小球でモデル化した軸受(モデル軸受)を製作した.さらに,運転時間の経過にともなう軸受内部の含油量の変化,軸受しゅう動面の摩擦力等を測定するための計測システムを設計した.そして,モデル軸受を用いて,運転時間の経過にともなう含油量の変化を調べた結果,以下の点が明らかになった. 1.軸受(多孔質体)の透過率が小さいほうが,軸受内部の潤滑油の減損する速さは小さい. 2.軸受のすきま比(軸受半径すきまの軸受内半径に対する比)の大きいほうが,運転開始直後の潤滑油の減損する速さは小さい. 3.軸受内部の潤滑油は,負荷側の軸受内周面から軸受内部(軸受外周部)に向かって減損し始める.減損し始める周方向の位置は,概ね荷重線より若干軸回転方向に進んだ箇所である. 4.軸受の透過率が小さくなると,潤滑油の減損に及ぼす重力の影響は小さくなる.これより実際に使用されている焼結含油軸受においては重力の影響は無視できるものと予想される. さらに,軸受すきま内を通過する潤滑油の流量のバランスならびに運動量のバランスを考慮して,油膜圧力に関する境界条件式を立てた.そして,これら境界条件式を用いて油膜および軸受内部の圧力を数値解析により求め,得られた圧力分布より運転開始直後に軸受内部から潤滑油が減損し始める位置を調べた.その結果,次の点が明らかになった. 5.軸受内部から潤滑油が減損し始める位置は,実験と計算で比較的よく一致した. 6.5.の結果より,油膜内(油膜後端部)に生じる負圧が,軸受内部より潤滑油が減損し始める原因として挙げることができる。
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