-10℃から0℃にかけて、氷上のゴムの摩擦は著しく低下することがすでに知られている。本研究において、各種ゴムの摩擦に及ぼす温度の影響について詳細に調べた。また、摩擦のデータが再現よく測定可能な-5℃の温度で、氷と各種ゴムとの摩擦速度及び接触圧力の影響について明らかにした。本研究は次の二つに大別できる。 (イ)トレッド用ゴム試料として、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)とをブレンドした標準ゴムと、それを発泡させた低硬度及び高硬度発泡ゴムに、短繊維入り低硬度発泡ゴムの4種の摩擦特性を調べる研究。 (ロ)標準ゴムに、短繊維を3部、6部、10部充てんし、一軸方向に配向させた試料で、短繊維の配向方向と垂直なゴム表面と相手氷、水濡れ面、乾燥面とを摩擦し、短繊維強化の効果を調べる基礎研究。 以上の二つの研究で得られた結論は、次の通りである。 (1)-10℃〜0℃の氷の上でいずれのゴム試料とも単調に摩擦係数は低下する。乗用車で使用される0.2MPaの接触圧力では、短繊維入り低硬度発泡ゴムが、低硬度及び高硬度の発泡ゴムより摩擦係数は高く、標準ゴムは最低であった。しかし、1MPaの高圧力では、いずれのゴムも摩擦係数は低下し、その差はわずかであった。 (2)-5℃の氷上の摩擦速度による摩擦係数の変化は、標準ゴムでは、1〜10cm/sの範囲でほぼ一定の比較的低い摩擦係数を示すが、20cm/s以上で急激に低下を示した。低硬度及び高硬度の発泡ゴムでは、標準ゴムよりやや高い摩擦係数を示し、高速度でいずれも低下する傾向がある。短繊維入り低硬度発泡ゴムでは、調べた各摩擦速度で摩擦係数は高く、30cm/s以上で低下した。 (3)短繊維を配向させたゴム試料と-5℃との摩擦では、高速及び高圧力においても摩擦係数の低下は少ないという興味ある結果が得られた。
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