本研究では本年度においては、(1)血液による流体潤滑の基礎式を導くこと、(2)血液潤滑に適した動圧グループ軸受の形状を数値解析によって探ることを目的にして行った。 (1)については、当初Cassonの式に基づいて血液流体潤滑の基礎式を導き、非ニュートン流体として動圧グルーブ軸受の特性の検討を行う予定であった。しかし、導いた基礎式が当初考えたものより複雑なものとなったこと、および軸受すきまのせん断応力によって血液中の血球が破壊されるためニュートン流体としての取り扱いが可能になることを考慮し、軸受諸元の決定にはニュートン流体とした潤滑理論によって検討することにした。なお、血液による流体潤滑の基礎式に基づいた動圧グルーブ軸受解析理論の構築については、来年度も継続する予定である。 (2)については、軸受すきま内のせん断応力によって溶血した血液を軸受外部へ漏らさないように軸受すきま内部に閉じこめておくという方針で設計を行った。設計した軸受形状は従来の動圧グルーブ軸受の軸端部に溝深さが深い円周方向の溝部分と丘部分を設け、漏れ流量に対する軸受外部との干渉領域とした。この軸受形状は半径方向の偏心に対しても有効であり、軸受すきまからの漏れ流量は従来の動圧グルーブ軸受の約1/20にも減少できることを明らかにした。
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