本研究の目的は、ナノテクノロジ分野で利用される各種超精密機器の性能を左右する空気静圧軸受の軸受性能向上をめざして考案された能動型自成絞りの特性を解析することである。そのために、この能動型自成絞りを組み込んだ空気静圧スラスト・ラジアル軸受を設計・製作し、軸受剛性、回転精度を測定した。その結果、次のことが明らかとなった。 (1)軸受内径29mm、長さ50mmのラジアル軸受に組み込まれた能動自成絞りにより軸受のラジアル方向剛性を無限大にできた。また回転精度は、制御前0.5μm程度であったものが能動制御により0.1μm程度に改善され、軸静止時に制御を行ったときの安定性は30nm程度であった。 (2)軸受内径30mm、外径65mmのラジアル軸受に組み込まれた能動自成絞りにより軸受のスラスト方向剛性を無限大にできた。また回転精度は、制御前0.3μm程度であったものが能動制御により50nm程度に改善され、軸静止時に制御を行ったときの安定性は5nm程度であった。 つぎに能動自成絞りの汎用性を示すために、既成のエア-スピンドルの改造を行った。このスピンドルのラジアル軸受用絞りのうち3個を能動自成絞りに交換し、特性を測定したところ、組み込まれた能動自成絞りにより、ラジアル方向剛性を無限大にでき、また回転精度は、制御前0.2μm程度であったものが能動制御により30nm程度に改善され、軸静止時に制御を行ったときの安定性も30nm程度であった。 以上の結果より、能動自成絞りの有効性が確認された。したがって、この絞りを組み込むことでより高性能で安定した空気静圧軸受システムが実用化され、今後のナノテクノロジ各分野で使用される回転機構を持つ機械・装置の性能を高め、次世代の科学を開拓するための基礎技術の発展に貢献できるものと期待できる。
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