研究概要 |
本研究では,まず,浸炭焼入れ焼結金属歯車およびローラに対してショットピーニングを施し、歯車運転試験および二円筒試験を行い,これらの歯車,ローラの曲げ疲労強度,面圧強度に及ぼすショットピーニングの影響について調べた.つぎに,焼結温度,密度および熱処理条件[ずぶ焼入れ(大気,真空中),浸炭焼入れ]の異なる焼結金属ローラに対して二円筒試験を行い,ローラの面圧強度に及ぼす焼結温度,密度,熱処理条件の影響について検討を加えた.その結果,つぎの諸点が明らかになった. 1.浸炭焼入れ焼結金属歯車にショットピーニングを施すと,表面硬さは増大するが,硬化層厚さはほとんど変わらない.また,焼入れ前の炭素含有量が増加しても(C0.3〜0.5%の範囲),表面硬さはほとんど変わらないが,硬化層厚さは大きくなり,心部硬さが増大する. 2.浸炭焼入れ焼結金属歯車の曲げ疲労限度は,焼入れ前の炭素含有量(C0.3〜0.5%)によってはほとんど変わらないが,面圧疲労限度は炭素含有量の増加につれて増大する傾向を示す. 3.焼結金属歯車の曲げ疲労,面圧疲労限度は,ショットピーニングを施すことにより,それぞれ20〜40%程度,5〜25%程度増大する. 4.焼結金属歯車およびローラの面圧損傷は,スポーリングが支配的で,荷重伝達能力は面圧強度に支配される. 5.焼結金属ローラでは,焼結温度の上昇および密度の増加につれて,気孔形状が円形に近づき,気孔数が減少し,面圧疲労限度は増大する傾向を示す. 6.焼結金属ローラの面圧疲労限度は,大気,真空ずぶ焼入れではほとんど変わらないが,浸炭焼入れの場合には,それよりも小さい.
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