研究概要 |
今年度では、ステンレス鋼SUS440C材の鋼球、円筒及び歯車について、それぞれすずめっき熱拡散処理を施した試験片を製作し、グリース潤滑状態で四球試験機、二円筒試験機及び歯車試験機を使用して拡散処理被膜の摩擦・摩耗特性について実験を行った。なお、歯車試験では、真空度が10^<-4>Pa程度の高真空状態における歯車の摩擦・摩耗特性について検討を行った。これらの実験結果より、下記のことが明かになった。 (1)四球試験の場合では、約6μmの拡散層を施した場合の焼付き荷重は未処理のそれと比して2〜4倍上昇する。一方、拡散処理球と拡散未処理球の場合の焼付き臨界温度の平均値は無添加の場合では約167℃、3%の場合では約176℃,10%の場合では約191℃,30%の場合では約263℃となり、二硫化モリブデンの添加濃度の増加に伴って臨界温度は上昇する。 (2)二円筒試験の場合では、拡散処理円筒の焼付き荷重は拡散未処理円筒のそれと比してかなり大きく現れる。しかしながら、二硫化モリブデンの添加により、円筒の焼付き荷重はやや低下する。 また、拡散処理を施した試験円筒の焼付き臨界温度はいずれの形状の場合も400℃以上あり、拡散未処理円筒の場合と比して著しく高い。一方、接触形態により大きく変動するpV値と比して、臨界温度の変動は比較的小さい。 (3)乾燥摩擦における歯車試験の場合では、拡散処理を施した歯車対B,C及Dの場合の時間強度はほぼ同程度であり、拡散未処理の歯車対Aのそれと比して著しく大きい。
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