液体窒素中でのキャビテーション初生と過渡音響に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06650185
• 研究機関: 北海道教育大学
• 研究代表者: 富田 幸雄 北海道教育大学, 教育学部・函館校, 助教授 (00006199)
• 研究分担者: 坪田 誠 東北大学, 流体科学研究所, 助教授 (10197759)
• キーワード: キャビテーション / 気泡 / 液体窒素 / 過渡音響 / 衝撃波 / レーザー / プラズマ / 相変化

研究概要

二重鏡筒法の適用により球体気泡の生成に成功し、熱依存性の強い低温流体場における発泡手段の基礎が確立した。引き続き、光エネルギーと気泡生成エネルギーとの関係を実測し、液体窒素中および水中における気泡生成に必要なエネルギーがそれほど変わらない結果を得た。実際、キャビテーション核の測定から、二つの液体中における核分布に大きな差異は認められなかった。液体窒素中には、何等かの理由で固体粒子あるいは気体核が存在していたものと推測できる。次に、光エネルギーの集中により起こる液体の絶縁破壊、プラズマ生成、衝撃波の発生、さらにはキャビテーション気泡の生成という一連の高速現象を、液体を加圧することにより実現される異なるサブク-ル度に対して光学的に詳細に観察した。その結果、プラズマはレーザー光の時間特性およびビーム・ウェストでのエネルギー密度に依存して複数箇所から発生し、そこを起点としてキャビテーション気泡が生成されること、またこれらのプラズマの爆発的な膨張により発生される衝撃波が気泡と複雑に干渉し合い、過渡音響現象を誘起していることが明らかとなった。一方、生成後の気泡挙動の全貌をフレーミング法およびストリーク法を適用して詳細に観察し、熱伝達支配領域での気泡運動に及ぼす環境圧力の加圧の影響を明らかにした。気泡挙動に及ぼす加圧の影響は、サブク-ル度を変化させることと等価な結果を与え、加圧の増大と共に気泡の運動に及ぼす液体慣性の影響が顕著となった。気泡の形状は、崩壊末期におけるTaylor不安定と熱不安定の重畳作用のために著しく変形し、状況によっては気泡の分裂が起こることが示唆された。以上の結果の一部は既に「第2回キャビテーションに関する国際シンポジウム」(平成6年4月東京)で公表され、また今年3月開催予定の「日本機械学会東北支部講演会」で発表予定である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Tomita: "An Experimental Investigation on Bubble Motion in Liquid Nitrogen" Proceedings of the 2nd International Symposium on Cavitation,Tokyo. 311-316 (1994)
• [文献書誌] Y.Tomita: "Interaction of Two Laser-Produced Cavitation Bubbles Near Boundaries" In:Blake,J.R.et al.(editors),Bubble Dynamics and Interface Phenomena,Kluwer,Academic Publishers. 33-45 (1994)
• [文献書誌] 坪田誠: "加圧液体窒素中におけるレーザー生成気泡の挙動" 日本機械学会論文集(B編). 61-582. 365-371 (1995)
• [文献書誌] 冨田幸雄: "衝撃波と気泡の相互干渉で誘起される液体ジェットの諸特性" 平成6年度衝撃波シンポジウム講演論文集. (発表予定). - (1995)
• [文献書誌] 長根一宏: "レーザーフォーカスによる液体窒素中での気泡の初生と急速膨張" 日本機械学会東北支部第30期総会講演会講演論文集. (発表予定). - (1995)
• [文献書誌] F.Takemura: "Effects of the Internal Phenomena on Bubble Motion in Liquid Nitrogen" To be Presented at the 2nd Joint ASME-JSME Fluids Engineering Conference,Hilton Head Island. (発表予定). - (1995)