二重鏡筒法の適用により球状気泡の生成に成功し、熱依存性の強い低温流体場における発泡手段の基礎が確立した。引き続き、光エネルギーと気泡生成エネルギーとの実測から液体窒素中および水中における気泡生成に必要なエネルギーがそれほど変わらない結果を得た。キャビテーション核の測定から二つの液体中における核分布に大きな差異は認められなかった。液体窒素中には何らかの理由で固体粒子あるいは気体核が存在しているものと推察できる。次に、光エネルギー集中の結果生じる液体の絶縁破壊、プラズマ生成、衝撃波生成およびキャビテーション気泡の発声という一連の高速現象を高速度カメラで光学的に詳細に明らかにした。その結果、プラズマはレーザー光の時間特性およびビーム・ウエストでのエネルギー密度に依存して複数箇所から発生し、そこを起点としてキャビテーション気泡が発生すること、またこれらのプラズマの爆発的な膨張により生成する衝撃波は気泡と干渉して過渡音響現象を誘起していることが明らかとなった。一方、液体加圧に対応して変化する異なるサブク-ル度の液体窒素に対してレーザー生成される気泡の運動を観察し、生成直後の気泡はプラズマ形状を反映して光軸方向に細長い非球状形状であるが、体積の時間変化はいわゆる相似的に行われていること、また気泡は急速膨張する過程で速やかに球状に変形することが明らかとなった。さらに気泡の膨張過程は液体慣性に支配されているのに対して、崩壊過程では熱力学的効果、特に気泡内部に生成される液体窒素の分子の挙動が重要となり、気泡の運動は著しく減速されて崩壊時間の大幅な遅延化が認められた。物理量が急変する気泡リバウンドにおいてTaylor不安定と熱不安定の重畳作用のため高次の振動成分が励起され、その結果気泡表面の不安定が著しく発達してやがて気泡は分裂した。
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