本研究は流れによって生ずる振動物体の空力不安定振動現象のフィードバック発現機構の解明とその制御を行ったものである。平成6年度は空力不安定振動現象によって発現振動する物体を模擬し、強制的に並進及び回転振動させ、物体周辺の流れの構造と流体力特性を調べて物体の振動性状と関連づけ、空力不安定振動現象のフィードバック発現機構の解明を行った。つづいて平成7年度は強制的に回転並びに並進振動させた物体にパッシブ的な制御を試み、空力不安定振動の発現を抑制する最適制手法の確立を図ったものである。2年間に渡る本研究で得られた知見は以下に示すものとなる。なお物体は構造物要素として、最っとも基本と考えられる種々の辺長比を有する矩形柱を採用して行った。 (1)完全剥離型矩形柱の周辺領域では、後方に形成されるカルマン渦が強化され、その結果、フィードバック的に剥離せん断層の巻き上がりが強まり、流体力は同期領域で急激に増大する。 (2)前縁剥離渦型矩形柱では同期領域では前縁はく離渦と後縁二次渦との巻き上がり位相が一致する。その結果後方に形成されるカルマン渦は強化され、フィードバック的に周辺の流れの変動が増大する。 (3)カルマン渦によるフィードバック機構を明らかにするために、物体の背後に尾板を設置したその発生を制御した結果、同期領域ではカルマン渦のフィーバック現象が強いが、非同期領域では存在しない。 (4)流れをパッシブ的に制御した空力不安定振動現象を抑制するための手法を確立するために、まず静止矩形柱の制御を行った。その結果物体前方に小物体を設置する手法が極めて有効であることがわかった。 (5)強制的に回転並びに並進振動させた矩形柱の前方に平板を設置して流れを制御した結果、物体の流体力および渦生成はほぼ抑制され、空力不安定振動現象の発現はほぼなくすことができた。
|