研究課題
新型の原子力発電システムとして開発が推められている高速増殖炉における原子炉容器内流れは、自由液面をもった3次元の複雑な流れとなっている。このような、高速の流れ場においては自由液面は流れと干渉し波立つと考えられる。しかしながら、液面が乱れた条件における自由液面乱流境界条件は、光線形性が強いため、有効なモデルはない。また、自由液面が大きく移動することから計測も非常に困難であり、乱れた液面の乱流挙動を定量的に計測した例はない。本研究では、申請者らが開発してきたコンピュータビジョンの手法を用いることによって、自由液面乱流挙動を解明することを目的としている。2年計画の初年度である本年度の研究実績は以下のようである。1.水平ノズルからのジェットと自由液面が干渉することにより、乱れた液面を形成する試験体を製作した。2.粒子の移動を追跡するためのアルゴリズムとして、粒子のパターン認識に基づいた、まったく新しいアルゴリズムを開発した。一般に用いられている画像相関法は、粒子パターンの並行移動を仮定しているが、乱流のような流れ場においてはこの仮定を満たさない。本研究にて開発したアルゴリズムは、せん断や渦等によるパターンの変形にも対応できるため、乱流計測への応用が可能である。本手法は2次元計測に適用し、有効な手法である事を確認した。さらに、本手法を3次元計測に応用する事を試み、精度良く3次元流速分布を計測する事ができることを確認した。本手法は、乱流などの複雑な流れを計測する上で非常に有効であると考えられ、今後の発展が期待できる。3.自由液面近傍の流速を精度良く可視化するため、液面近傍の流れを計測するカメラと液面位置を計測するカメラの2台を同時に用いる手法を開発した。本手法を用いて、流速と、自由液面位置をコンピュータビジョンの手法で同時計測することができた。さらに、計測データを用い、乱れた液面における流れと液面相関量を算出することができた。従来の研究では、液面が変動しない場合に関して、乱流エネルギーなどの測定を行っている。しかしながら、液面が変動する条件における相関量については本研究によって始めて計測されたものであり、その意義は大きい。
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