新型の原子力発電システムとして開発が推められている高速増殖炉における原子炉容器内流れは、自由液面をもった3次元の複雑な流れとなっている。このような、高速の流れ場においては自由液面は流れと干渉し波立つと考えられる。さらに、最近、流れと自由液面との干渉による自励振動現象が発見されたが、実機においては、自励振動が発生することは絶対に避けなければならない。これらの現象を理解するためにも、自由液面が乱れた条件における流れの状況を把握する必要がある。しかしながら、液面が乱れた条件における自由液面乱流境界条件は、非線形性が強いため、有効なモデルはない。また、自由液面が大きく移動することから計測も非常に困難であり、乱れた液面の乱流挙動を定量的に計測した例はない。本研究は、申請者らが開発してきたコンピュータビジョンの手法を用いることによって、自由液面乱流挙動を解明することを目的として実施した。その結果以下の研究成果が得られた。 コンピュータビジョンを応用した、全く新しい流速測定手法アルゴリズムを開発した。一般に用いられている画像相関法は、粒子パターンの並行移動を仮定しているが、乱流のような流れ場においてはこの仮定を満たさない。本研究にて開発したアルゴリズムは、せん断や渦等によるパターンの変形にも対応できるため、乱流計測への応用が可能である。この手法は、粒子パターンを仮想的なバネで接続し、変形に伴うバネの力をパラメータとして、パターン対応付を行うものである。本手法を2次元計測に適用し、有効な手法である事を確認した。さらに、本手法を3次元計測に応用する事を試み、精度良く3次元流速分布を計測する事ができることを確認した。本手法は、乱流などの複雑な流れを計測する上で非常に有効であると考えられ、今後の発展が期待できる。 自由液面近傍の流速を精度良く可視化するため、液面近傍の流れを計測するカメラと液面位置を計測するカメラの2台を同時に用いる手法を開発した。本手法を用いて、流速と、自由液面位置をコンピュータビジョンの手法で同時計測することができた。さらに、計測データを用い、乱れた液面における流れと液面との相関量を算出することができた。従来の研究では、液面が変動しない場合に関して、乱流エネルギーなどの測定を行っている。しかしながら、液面が変動する条件における相関量については本研究によって初めて計測されたものであり、その意義は大きい。さらに、計測された相関量に対してモデル化を試み、局所的な乱流場における液面と乱れとの関係を明らかにした。
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