研究概要 |
1.異なった2つの液体を隔てる液体界面のモデルをMC法によって数値的に研究した.そのモデル(:モデルAと呼ぶ)は,系の力学変数が界面分子の「位置」のみであるようなもので,もう一つの力学変数である界面の「3角形分割」は変化させないで1つに固定したものである.また,界面は自分自身と交わらないという自己回避性の性質を持たないものとした. 2.特に,(1)計算結果が3角形分割に依存しないかどうか,(2)このモデルの相転移は昨年度研究した,力学変数が「分子の位置」と「3角形分割」の2種類であるモデル(:モデルBと呼ぶ)と同じかどうか,という2つの観点から研究を進めた.(1)は数値実験の再現性という点で,モデルが持たなければならない性質の1つである(2)は「3角形分割」という物理量が,界面の相転移という現象に絡んで,重要な役割を担うかどうかということである. 3.現在までに行ったことと,得られた結果を論文としてまとめて,平成8年2月末に機械学会論文集に投稿した.その主な内容は次のとおりである. (1).界面の3角形分割としては,モデルBに於いて低温で実現されると期待される,各分子から出ているボンドの数が界面全体でほぼ一様であるようなもの,を対象とした. (2).(1)のような条件で作られた多数の3角形分割格子を用いて,比熱等を計算し,その結果から,モデルAは2次の相転移を持つことが判った.更に,臨界点の値,比熱のピーク値と分子数の関係から定まる臨界指数等は,(1)の条件の3角形分割には依存しないことが予想できた. (3).モデルAとモデルBで臨界点と臨界指数の値を比べると,臨界点は明らかに異なっていること,臨界指数も異なっていそうなこと,が予想できた. 4.今後の研究としては,モデル界面の相転移と3角形分割の関係を更に詳しく調べると,MC法以外の数値的方法例えば分子動力学やLangevinシミュレーションの方法を利用すること,界面の連続的モデルの離散化法としてモデルA,Bとは異なった方法を用いて作られる離散的モデルの相転移現象を調べること等,研究すべき多くのことが残されている.
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