研究概要 |
微小な白金細線を用いてすいのプール飽和沸騰実験を行い,核,遷移,膜の各沸騰モードにおける白金細線の温度変動を高速で記録した.その時系列データに対し,高速フーリエ変換を行ってスペクトル解析するとともに,相互情報量を計算し,位相空間を再構成するための遅れ時間間隔を導き,アトラクターを描いて,沸騰モードの違いを調べた.その結果,遷移沸騰は核沸騰と膜沸騰が混在する形で現れることが明らかになった.時系列データから,さらに相関次元を求め,沸騰モードの複雑さを定量化した.その結果,核沸騰から限界熱流束にかけて次元は次第に増加するが,遷移沸騰から膜沸騰にかけて減少し,膜沸騰は次元3程度の比較的低次元現象であることがわかった. 一方,沸騰で現れる蒸気泡は非線形挙動を示し,沸騰現象をモデル化する際はその非線形性を明らかにしておく必要がある.このための基礎研究として,水と空気の2相系で,オリフィスから生ずる単一気泡の成長,離脱の挙動を実験的に調べた.すなわち,熱線により気泡まわりの水の流速変動を測定し,それを基に非線形解析をおこなった.その結果,気泡に見られる周期や離脱径の複雑さは,気泡同志の干渉と合体により生じること,そうした挙動は高流量(沸騰だと高熱流束に対応する)で現れ易いことなどが見出された.また,理論モデルを構成してシミュレーションを行った結果,干渉や合体の精密なモデル構成の問題は残るものの,気泡の基本的な挙動は理論的にも説明可能であることが判明した.
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