誘電物質が高周波電場中に置かれると、電気的平衡状態にあった誘電体分子は分極化し、電場方向に一様に揃えられる。この分極状態が交互に繰り返される事によって分子は衝突・摩擦し合い、その際に発生した熱が物質を加熱する。この原理を用いて周波数300MHz〜300GHz周波数帯域において物質を加熱するものがマイクロ波加熱である。 マイクロ波加熱では、気・液・固相による誘電物性の違いが重要な意味をもち、それらが共存する系では液相でマイクロ波のほとんどは吸収される。本研究では、マイクロ波加熱における電磁場と熱の相互作用を伝熱学的に解明することを目的とし、固相・液相からなる融解および固相・液相・気相からなる乾燥に対するマイクロ波加熱を取り扱い、以下の結果を得た。 1)被加熱物が固相と液相からなる系にマイクロ波を照射すると、その吸収はほとんど液相で生じる。この特徴を踏まえて、水層と氷層からなる一次元氷の融解過程を取り扱い、水層が氷層の上にある場合とその逆の場合では融解面の進行方向が反対方向となり、結果として融解速度が異なることを理論的および実験的に明らかにした。 2)マイクロ波加熱による成層凍結粒子層の融解実験を行い、融解の発生位置およびその進行が初期温度条件、層の誘電特性、入射電界などにより影響されることを実験的に明らかにした。 3)被加熱物が固相、液相、気相からなる粒子層の乾燥にマイクロ波加熱を適用し、毛管力による粒子層内水分浸透理論と電磁場・熱解析を組み合わせた粒子層内水分乾燥理論を提示するとともに、水分粒子層の乾燥実験結果との比較によりその妥当性を示した。マイクロ波の吸収が液相に集中するため毛管力による水分移動の効果がより重要となることを明らかにした。
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