本研究は、着霜剥離を促進するために、パルス放電による高圧電場付与を実現し、着霜の成長・抑制特性を明確にすることが目的である。前年度の結果を総括し、最終年度の得られた結果を以下に要約する。 局所熱伝達測定用円柱を製作し、連続電場およびパルス放電による熱伝達率を測定霜成長の抑制特性を明らかにした。基本的には印可加電圧が高いほど抑制効果は高く、パルス周期が大きく、デュティー比が大きいほど効果が高い。印可電圧が同じで、パルス周期が小さいと連続印可より劣化する。 次いで、伝熱管表面に水性の絶縁膜をコーティングした管を製作し、これにより、パルス放電をより容易に生じさせると共に、伝熱面から霜の剥離離脱性能の向上を検討した。特に、熱抵抗となり、同時に放電特性に影響する膜厚は変化させる予定であったが、所定の膜厚制御(50μm一定)はできなかった。 コーティング管による濡れ性の効果について、前年度の手法を用い着霜の状況を観察し、霜生成への影響を明確にした。電場付与のに伴う各因子に対し、測定し、着霜剥離の時間変化を明確した。ハ水性膜(ネオフロン FEPフィルム:4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重体)の効果は、着霜初期において顕著であるが、時間経過と共に顕在化しなくなり、一時間後で、その効果は裸管に対して約3%程度である。 基本的に電場付与による霜層成長抑制効果は霜の成長期においてであり、実際には、電場付与により、霜(水)の分極が起こり、同時にプロトンのオーダリングのため、霜は等方成長から異方成長に変化し、急速に成長する極めて針状の霜が成長し、それが電場(コロナ風)によって吹き飛ばされるという機構になっている。結果的には電場付与により着霜促進と針状化による離脱の促進という構造になるが、ミクロ的な構造の検討が今後の課題といえる。
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