本研究では、速度の異なる二つの一様空気流の境界に置かれた焼結金属製の半円柱の後流に安定化された二種類の2重火炎の構造と挙動を実験的に研究した。一つは低速側のノズルリムに付着する層流拡散火炎と高速側の浮上がり火炎から成る平面拡散火炎、他の一つは半円柱下流に左右対称に形成される浮上がり火炎から成る物体後流火炎である。二種の火炎を音響的に励起してそれぞれの火炎に固有な組織構造の時間周期性を高め、これに位相平均法を活用することによって、火炎構造に及ぼす音響励起の効果と組織渦および組織構造火炎の形成に関する位相特性を調べた。励起周波数は300Hzとした。 火炎の瞬間影写真観察によれば、音響励起強度の増加とともに初期せん断層の不安定性から組織渦への遷移が促進され、一般的特性は不変のまま、組織構造火炎の輪郭が明確になることがわかった。また、温度およびイオン電流強度の変動の周波数スペクトルから、励起強度の増加とともに励起周波数の基本ピークとその高調波のみが卓越して白色ノイズ成分が消滅することが明らかとなり、基礎的観点からは位相平均法の適用が可能となること、一方、実用面からは燃焼騒音の低減が可能となることを示した。 以上の音響励起の効果の把握に基づいて、二種の火炎の中心断面における多点での系統的な温度とイオン電流強度変動の測定結果から、温度とイオン電流強度の二次元位相平均分布を8つの連続した等間隔の位相における変化として表示した。これにより、組織構造火炎の着火が循環領域に沿って定在する火炎の上流端(火炎の芽)の発達によること、平面拡散火炎における組織構造火炎の平均寿命(組織渦の発生から組織構造火炎の発生・成長・消滅に至る過程)が組織渦形成周期の約3倍であること、一方、物体後流火炎における組織構造火炎の平均寿命は組織渦形成周期の約2倍であることを明らかにした。
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