低温空気熱交換器の着霜問題は、この種の熱交換器では避けて通れない、宿命的問題である。この問題解決のため、実用的観点より逆サイクルホットガス除霜方式が一般に普及している。しかしながらこのホットガスサイクル方式の除霜熱効率は約20%と低く、また再び冷却状態に回復するには多くの時間を必要とするなど様々な欠点を有する。近年のエネルギー価格の上昇機運の中で省エネルギータイプの除霜方式確立を主な目的として、放射熱エネルギーの特徴を除霜過程に活用したことが本研究の特色である。すなわち、霜層が霜構造・密度に応じ最適な放射吸収を示す波長帯が存在し、このような波長帯の放射熱エネルギーを霜面に照射することにより、直接霜層を融解する熱効率の高い状態で除霜が可能となる。放射熱源としてハロゲンヒーターの反射板または保護管はアルミナ系セラミックスを特殊コーティングし、長波長域の放射強度を増大したものを用いることにより、放射熱源の問題を解決したものである。このような熱源により大部分の放射熱が霜層に直接吸収され、熱交換器の予熱等に使われる熱エネルギーが極端に少なくなる。従って、本研究で提案する除霜方式は、除霜運転を必要とする空気冷暖房システムにとって画期的な方法となる。さらに、昇華蒸発を利用した除霜の熱源としても放射熱エネルギーを用いる新たな展開も行っている。本研究で解明する範囲は、霜層の構造による最適な放射熱エネルギー吸収波長帯と放射熱エネルギー強度の検討、最適な放射熱ランプの開発そして霜層の放射熱による融解のメカニズム解明を基礎として、昇華蒸発による除霜を含む最適な放射熱を利用した除霜運転条件の決定にある。本研究で提案する除霜方式は、除霜運転の高効率化による省エネルギー効果を生む一方で、一連の得られた成果は、この種の除霜方式の体系化に寄与するものである。
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