本研究の最も主要な特徴は、流動層内の伝熱管上の局所的な粒子の挙動と熱伝導率とを、同時に同じ位置で測定することのできる実験装置を工夫したことである。又、このようにして得られた実測値を、粒子接触時と非接触時とを分離して系統処理することによって、既存の理論伝熱モデルと実測値とを定量的に直接比較し、粒子接触による伝熱増進のメカニズムを解明することを試みたことである。 (1)実験装置について 発熱体に10μmの厚さのステンレス鋼箔、発熱体と管の間に挿入する熱電対には12μm径のクロメルコンスタンタン熱電対を用いた。伝熱管表面の熱伝達率を推定するのには、熱伝導逆問題の手法を用いた。熱電対と箔との間の熱抵抗を小さくする工夫によって、熱伝導率推定の周波数応答性を40〜50Hzまで高くすることができた。局所熱伝達率測定の空間分解能は、40Hz程度の変動に対しては約0.5mm程度になった。管軸に平行に貼り付けた光ファイバーによって構成される粒子挙動測定用光プローブは、透過光型と反射光型の2種類を製作し、接触粒子の体積分率と粒子の移動速度を測定した。反射光型によるデータは粒子速度を推定するためにのみ用いた。 (2)研究の成果について 平均粒子径0.42mmと1.0mmのガラスビーズを用いて得られた測定結果を、粒子が接触している時と接触していないときを区別して統計処理した。既存の伝熱メカニズムに関するモデルと比較した結果、1mm粒子は管の全周で大きな粒子の解析モデル(粒子の伝熱面上の滞在時間が、粒子の熱時定数より十分に短く滞在時間が熱伝達に与える影響を無視できる)で扱うことができること、0.42mm粒子では管の下側では大きな粒子のモデルが適用できるが、管の上側では適用できないことを定量的に明らかにした。
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