研究概要 |
当初は本年度に平滑管,平成7年度に内面ら旋溝付管における実験をそれぞれ行う計画であったが,実験遂行上の都合および試験冷媒の無駄を省くため,本年度に両管における単一成分冷媒HFC134aと質量分率でHFC32が30%,HFC134aが70%の混合冷媒の沸騰・蒸発熱伝達と圧力損失に関する実験を行い,7年度は成分比が異なる混合冷媒について両管における実験を行うことに計画を変更した。 本年度得られた成果は,以下の通りである。 1.単一成分冷媒HFC134aの平滑管内局所熱伝達係数は,従来のフロン系冷媒について本研究者らが提案していた熱伝達予測式と良く一致することを確認した。 2.単一成分冷媒HFC134aについても,ら旋溝付管によって,従来の冷媒と同程度の伝熱促進が達成されることを明らかにした。 3.混合冷媒HFC32+HFC134aの物性値に関するデータベースを作成した。 4.混合冷媒の平滑管内の局所熱伝達特性は,従来明らかにされている非共沸混合冷媒の伝熱特性と同じ傾向を示した。すわなち,低流量,高熱流束,高クオリティで核沸騰の伝熱に対する寄与が大きくなる場合ほど,成分冷媒の物質拡散抵抗のため,物性値が等価な純冷媒より伝熱は悪くなり,高流量,低熱流速,高クオリティで強制対流が支配的となる領域では,物質拡散抵抗の影響は比較的小さく,物性値が等価な純冷媒との差は小さくなる。 5.混合冷媒でも,単一成分冷媒HFC134aの場合と同様に,ら旋溝付管によって,伝熱促進が達成された。しかしながら,単一成分冷媒HFC134aでは,熱伝達に及ぼす流量の影響がほとんどなくなるのに対し,混合冷媒では,全般的に流量による大きい影響が認められ,高流量では冷媒HFC134aとほぼ等しい値であるが,低流量では冷媒HFC134aよりかなり小さい熱伝達係数になる。したがって,混合冷媒における伝熱促進の程度は,単一成分冷媒の場合よりも全般に小さく,伝熱促進の程度が大きい低流量の場合でも単一成分冷媒HFC134aの60%程度になっている。 6.溝付管および平滑管での混合冷媒の圧力損失は,単一成分冷媒HFC134aの場合と比べて,いずれの管でも数%程度低い。
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