研究概要 |
本研究ではVOF法をベースにした数値解析コードを次の3段階に分けて開発した.(A)電場および相変化なし,(B)電場考慮,相変化なし,(C)電場および相変化を考慮.本年度は当初の予定通り,(C)の段階までの数値解析コードの開発が完了した.まず,(B)の段階の数値解析コードにより,電場におけるR113の気泡の挙動を数値解析した.平行平板電極間に初期直径0.2mmの気泡を置き,平等電界をかけて気泡の変形の様子を計算した.その結果気泡は両電極の方向に伸びて楕円体状に変形した.電界強度と変形の大きさをCartonらの実験および理論解析と比較したところ,ほぼ一致することを確認した. 次に,不平等電界下での気泡の挙動を調べるために,電熱面に付着したR113の気泡の電場付与による離脱プロセスを計算した.上側の電極の直径を1mm,下側の電極の直径を0.4mm, 電極間距離を1mmとし,下側の電極に直径0.2mmの気泡を接触角15゚で付着させ、5, 10, 20kVの電場を加えた場合を数値計算した.電場のみの力を抽出するために無重力場での計算を行ったが,いすれの電圧においても気泡は下側の電極から引き剥がされるように変形・離脱した.ざっとした見積では5kVの場合の電場による力は重力加速度の100倍にも達することがわかった.この結果により,電場における沸騰で気泡が微細化する理由を定性的に説明することができる. (C)の段階の数値解析コードが正常に動作することを確かめるために,加熱面上のヘリウム気泡の成長・離脱問題のシミュレーションを行った.計算の条件は,初期気泡径20μm,加熱度0.1k,大気圧飽和とした.計算により得られた典型的な離脱気泡径は55μmであり,この値は従来の実験報告とほぼ一致した.電場を付与した場合も,(B)の段階の計算結果と定性的に一致する結果が得られた.
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