研究概要 |
内径16mm,蒸発部および凝縮部の長さがいずれも500mmの密閉型熱サイフォン管を用いて,熱サイフォン管内に沸騰と凝縮が発生する場合の熱伝達係数および限界熱流束に関する研究を行った。熱サイフォン管内の作動液体として水,エタノール,メタノール,フロン123,フロン134a,ペンタンおよびヘキサンを用い,作動温度はすべての液体で40℃〜90℃に変化させて実験を行った。実験は管内を真空に引いた後,作動液体を蒸発部内容積の約40%封入し,熱負荷を階段的に増加させながら行った。しかし,メタノールの場合は封入量の影響を調べるために30〜60%に変化させた。得られた結果は以下の通りである。1.蒸発部内の熱伝達係数に関して,アルコールの実験結果は井村らの式で良く整理されるが,水およびフロンはGrossの式で,炭化水素は神永・岡本の式でほぼ整理できる。このように,液体の種類によって異なった結果となるのは熱伝達係数と熱流束の関係が異なった指数を持つ関係となっているためである。 2.蒸発部壁温は低温流束の場合,蒸発部下部で高い温度を示した。この部分は液体プールに浸漬していると思われる部分であり,沸騰の発生が高いため温度が高くなったと考えられる。また,メタノールの封入量を変えた実験によれば,蒸発部壁温分布から判断して,50%程度の封入量が最適であると予測された。 3.凝縮部内の熱伝達係数は凝縮膜上に波が発生する場合の式でほぼ整理することができる。しかし,水の場合はすべてのデータが,アルコールおよび炭化水素で管内温度が低いか,または低熱流束の場合,凝縮熱伝達係数は小さな値を示した。 4.限界熱流束の実験値はImura et al.および深野らの実験式,および甲藤らの理論計算式によって比較的良く整理される。しかし,フロン123,ペンタンおよびヘキサンのデータは水,エタノール,メタノールおよびフロン113のデータよりも約50%大きな値を示した。
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