赤外線画像解析による加熱液膜流の液表面温度分布の測定法を確立することを目的に、基礎実験として静止した液体層を下方より一様に加熱する際の液表面温度の時間変化を赤外線画像解析装置と熱伝対とで同時測定し、両者の結果を比較検討した。実験は純水、シリコーンオイルおよびエチルアルコールの3種を用いて、液層の深さ、および加熱量を変化させて行った。以上の結果、いずれの液体も赤外線より液面の放射率を0.95として算出した温度分布が最も良く熱伝対の測定値と一致した。特に水に対して両者の結果は2%以内で一致した。シリコーンオイルでは赤外線の吸収係数が水に比べて小さいため液相内部あるいは加熱面からの放射に起因し、熱伝対よりも最大10%程度高めに表示する一方、蒸発し易いアルコールは熱伝対の結果よりわずかに低く表示する。 上述の静止液体層の液表面温度測定の結果、赤外線画像解析による測定値の特性を以下のように把握することができた。すなわち(1)液表面の温度分布の全貌を非接触で瞬間的に捉えることが。(2)液表面からの放射率は約0.95と1に近い値である。(3)液体の吸収係数が大きいほど液相内部からの放射は小さくなり、検出した赤外線のほとんどが液表面からのものである。以上より、赤外線画像解析が液体表面の温度分布に十分応用可能であることを明らかにした点で本年度の研究は達成されたといえる。
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