加熱される液膜流の不安定性や液膜破断にマランゴニ効果が深く関与しているが、これを解明するために、a.赤外線画像解析による液表面温度分布の測定法を確立する、b.上記の方法を用いて界面波(マランゴニ波)の発生から液膜破断までの動的挙動を調べ、液膜破断に果たすマランゴニ効果を明確にする、の2項を目的として研究を行った。まず、基礎実験として、静止した液膜を下方より一様に加熱する際の液表面温度の時間変化を赤外線画像装置と微細な熱電対とで同時に測定し、両者の結果を比較検討して、赤外線画像解析の測定精度を明確にした。次いで、加熱傾斜面および加熱垂直円管に沿って自由流下する液膜に対して、赤外線画像解析により様々な流動様式の流れ方向の液表面温度分布を測定した。これらの結果を基に、マランゴニ効果を考慮した薄膜流の不安定解析を行った。以上の結果、以下の知見を得た。1・水、シリコーンオイル、およびエチルアルコールの3種の静止液膜の液表面温度測定本測定法を以下のように把握することができた。すなわち1)液表面の温度分布の全ぼうを非接触で瞬間的にとらえられる。2)液表面の放射率はいずれの液体も0.95と1に近い値である。3)液体の吸収係数が大きい程液相内部からの放射は小さくなり、検出した赤外線のほとんどが液表面からのものとなる。2・加熱面上の流下液膜に対して、波動を伴う液膜の表面温度分布の詳細が明らかとなった。3・極めて薄い加熱液膜では、重力や表面張力よりも液表面の温度こう配に基ずくマランゴニ力が支配的となり、この領域で生じる波をマランゴニ波と定義した。マランゴニ波は臨界マランゴニ数0.23以上で発生し、液膜破断に密接に関わっている。以上のことより、液膜表面温度分布の測定法が確立し、さらに極めて薄い液膜流でのマランゴニ効果が明らかとなり、本研究の目的を達成することができた。
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