研究概要 |
実験装置である直噴式ディーゼル機関にレーザ光を用いた燃焼観測が可能となるように改造を加えた.この改造により,ミ-散乱法やPLIF法を用いて,燃焼室の任意の断面におけるすす分布や化学種濃度分布の2次元的情報を高い時間的・空間的分解能をもって得ることが可能となった.本年度は化学種発光計測に先だって,レーザを応用した計測法の中でも比較的実機への適用が容易な,すすの2次元弾性散乱画像の計測を行ない,その挙動について考察を行なった. 本実験では光源としてNd:YAGレーザの第2高調波(波長532nm)を使用した.観測平面はシリンダヘッドからの距離が3mm,8mm,13mmの各平面で,各クランク角度毎に8回づつ計測を行なった.また,得られた8枚の画像から統計的処理によって16階調表示の新しい画像を作成し,サイクル変動がすす存在領域に及ぼす影響を調べた. 実験の結果、以下のことが明らかになった. (1)燃焼初期にはすすがノズル近傍、噴霧軸およびその壁面衝突部付近に多く存在する. (2)燃焼中期以降はスワールの強い燃焼室壁面付近では新しい空気の導入が著しく、そのためすすの再燃焼が促進されている. (3)スワールの影響の小さいノズル近傍では燃焼後期に至ってもすすが再燃焼しにくく,そのまま冷却される傾向にある. (4)すす存在領域に関する再現性は,燃焼初期に低く,燃焼後期に高い. また,本年度の実験によって,本研究で使用するディーゼル機関にレーザを使用した光学的計測法の適用が可能であることが確認できた.さらに,当初からの予定である、PLIF法を用いたOHラジカル濃度分布計測の実現に見通しがたった.
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