研究概要 |
本研究は,極く短期間に複雑な化学反応を伴う非定常噴霧の燃焼機構に関するモデリングに有効なデータベースを提供することを目的とし,可視化直噴式機関において2次元レーザ光を照射し,火炎中の化学種の代表としての[OH]ラジカル発光,すす弾性散乱光法による計測を多サイクルにわたって行った. 実験に際しては,伸長ピストンを付設した燃焼室下方からの観察が可能な実験装置において (1)Nb:YAGレーザの第2高調波(532nm)および色素レーザー倍波結晶系から得られる284nmの光学システムを用いたレーザ誘起蛍光法による[OH]ラジカル分布の計測 (2)Nb:YAGレーザの第2高調波(532nm)によるレーザ誘起赤熱法および弾性散乱光法の2種の方法によるすす2次元空間分布の同時計測を,各クランク角度において行った.これらの結果は,多サイクルの統計値として取り扱った. 本年度および前年度の実験により,得られた主な結果は以下の通りである. (1)従来測定困難とされていた,レーザ誘起蛍光法による非定常噴霧火炎内の[OH]ラジカル2次元空間分布の計測が可能となった. (2)燃焼初期には,[OH]ラジカルは燃焼室内に広く分布する. (3)拡散燃焼期間においては,[OH]ラジカルはすす存在領域において高い密度を示す. (4)レーザ誘起赤熱法および弾性散乱光法によるすすの2次元空間分布はほぼ一致する. (5)燃焼初期の予混合燃焼期間においては,すすは噴霧火炎外縁に連続的に存在する. (6)燃焼室の壁面近傍では,燃焼初期から燃焼終了に至るまですすが存在する. (7)すすの再燃焼は主に拡散燃焼期間において活発である. (8)平均すす粒径は時間経過と共に単調に増加する.
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