本年度は、電磁力とばね力を受けるリンクモデルを例に取り上げ電磁弾性座屈現象の非線形解析を行なった。さらに実験装置を製作し、電磁弾性座屈電流を測定した。以下具体的に得られた結果を示す。 1.理論解析、電磁力とばね力を受けるリンクモデルの運動方程式(非線形常微分方程式)を導出し、理論解析を行なった。解析には近年臨界状態近傍の非線形解析手法として、注目されているLiapunov-Schmidt法を用いた。その結果、ばね力による初期復元力が大きい場合電磁弾性座屈電流は上昇し、電磁弾性座屈が生じにくくなることが明らかになった。電磁弾性座屈後の挙動については、初期復元力が小さい場合超臨界ピッチフォーク分岐を生じ座屈後においても安定な平衡状態が存在するが、初期復元力が大きくなると分岐が亜臨界において安定な平衡状態が存在しなくなることを理論的に指摘した。(倉田、薮野、青島、電磁弾性座屈後の挙動に対する非線形力の影響、日本機械学会計算力学講演会論文集、950-15、(1994)、149-150.) 2.実験装置の製作、電磁鉄心に銅線を1000回ほど巻いて強力な電磁石を作成した(ギャップ50mm、電流2Aで約10Nの力を発生する)。これを用いてリンクモデルに生じる電磁弾性座屈を観察し、初期復元力が大きくなると電磁弾性座屈電流が増加することを実験的に明らかにした。 3.今後の研究、上記の実験装置を用い電磁弾性座屈後の挙動を実験的に明らかにする。すなわち、本年度の研究で理論的に予測された、初期復元力と電磁弾性座屈後の挙動(亜臨界か超臨界か)との関係を実験的に考察する。また、これまでの研究では分岐の不完全性を無視してきたが、この点に関しても理論的ならびに実験的に検討を行なう予定である。
|