研究概要 |
耐電磁力構造の設計法の確立を目指した基礎研究の一環として本研究では電磁弾性座屈に関する非線形解析ならびに実験を行なった.従来の研究は構造物の変形に対する弾性力や電磁力の非線形成分を無視した線形理論による解析であり,座屈後の挙動を明らかにした研究はこれまでなかった.そこでまず簡単な電磁力を受ける梁モデルを導入し,電磁弾性座屈後の挙動すなわち座屈後に安定な定常状態が存在するか,存在するとすればその大きさはどのような物理パラメータによって決定されるかを明らかにした.さらに電磁弾性座屈の安定化制御法を提案しその適用限界をしめすとともに,シミュレーションによってその妥当性を確かめた.次に電磁弾性座屈に対するクーロン摩擦の影響を簡単な二リンクモデルに生じる電磁弾性座屈現象を例にとりあげて解析を行ない実験によってその妥当性を確かめた,以下1.電磁弾性座屈の非線形解析,2.電磁弾性座屈の安定化制御法,について本研究で明らかにされた成果を具体的に示す. 1.電磁弾性座屈の非線形解析:梁の横たわみにより生じる軸方向復元力に起因した非線形復元力とローレンツ力の梁の横たわみに関する3次の非線形成分を考慮に入れた運動方程式を導出した.運動方程式は非線形偏微分方程式であり,本研究ではLiapunov-Schmidt法と中心多様体理論を適用することによって,解析的な近似解を得た.この結果,電磁弾性座屈後安定な定常状態が存在し,その大きさは軸力による非線形成分の大きさにより決定され,これが大きいほど安定な定常状態すなわち横たわみは小さくなることが明らかになった.また電磁弾性座屈はピッチフォーク分岐であることを指摘し,分岐の摂動に関する解析を行い分岐集合,分岐図を明らかにした. 2.電磁弾性座屈の安定化制御法:分岐の摂動を利用した電磁弾性座屈の安定化制御法を提案した.すなわち電磁力を操作し不安定な不動点を適切に変化させることによって,不安定な平衡状態を安定化させた.本手法は分岐における不安定な平衡状態を利用しており、不安定な平衡状態が存在しない場合,適用は不可能である.そこで本手法の適用条件を示した.さらに本制御法の妥当性を数値シミュレーションによって明らかにした.
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