研究概要 |
実際の抄紙機ゴム巻きロールは軸方向の長さがロール直径に比較して非常に長い特徴を有する.そのため,抄紙機ゴム巻きロールのパターン形成現象である多角形化現象の解析をより実際に近づけるために,ロールの軸方向の変形を考慮して,トップロール(以後,TRとよぶ)とボトムロール(BRとよぶ)の層状構造物として伝達影響係数法を用いて効率的に解析する手法を確立した.また,ゴム巻きロールの多角形化現象を防止する試みとして,一方のロール内部に通した静止中実軸とロールの間の油膜による減衰効果と弾性補強効果を利用したコントロールド・クラウン・ロール(CCR)の有効性を確かめ,抄紙機ゴム巻きロールの設計の指針を与えることができた.成果は以下のようにまとめられる. 1.ロール系には,ロールの弾性モードと剛体並進モードが重なった太鼓形モード,ロールの弾性変形が主で節を2つもつ鼓形モードおよびロールがほぼ剛体で回転する剛体回転モードがある. 2.TRとBRが同位相の振動モードに対しては,TRにパターン形成は発生せず,逆位相の振動モードの内,鼓形および剛体回転形は外部減衰を付加することで比較的容易にパターン形成を抑制できる. 3.TRとBRが逆位相の振動モードの内,太鼓形はゴム部のパターン形成を起こしやすいモードであり,外部減衰によるパターン形成抑制効果があまり期待できない.太鼓形は,CCRの減衰効果および剛性補強効果によってゴムの多角形化を防止することができる.CCRによってパターン形成を起こさない回転数領域が拡大し,運転回転数をかなり上げることができる.一方,CCRの設置にともない新たなゴム巻きロールの多角形化モードが発生する. 4.運転回転数をさらに上げるためには,ニップ部のゴムの振動特性,ニップ部を離れたときのゴムの変形回復特性を正確に把握できることが必要である.
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