研究概要 |
本研究では、まず、人間の関節駆動筋に似せた拮抗筋構造をもつアクチュエータ(Antagonistic Muscle like Actuator,以下AMA)を考察し、その開発と平行して理論解析をおこなった.この結果非線形性をもつバネを導入することによりAMAによって駆動される関節の剛性を広く制御することができることを確認した.AMAの基本構造は以下の通りである.1対のボールねじにより1つの自由度が駆動される.1対のボールねじは1つのDCモータのみで駆動され、その駆動方式はステッピングモータによるギアの切り替えで以下のモードが可能である.(1)単駆動:片方のボールねじのみを駆動する.(2)同相駆動:対のボールねじナットを同時に同方向に駆動する.このモードにより主に関節の剛性が調節される.(3)相反駆動:対のボールねじナットを同時に反対方向に駆動する.このモードにより主に関節角度が変化する.ボールねじナットと関節は非線形性を有するバネを介してワイヤでつなげる.この機構の利点は対のボールねじを多セット配置することにより、1つのDCモータおよび1つのステッピングモータで複数の自由度を駆動できることであり、動力義手などのように体積・重量に制約のある機器への応用には有利でる.そこで、このAMAを搭載した前腕動力義手の開発をおこなった.開発した前腕動力義手は手首関節に2自由度および指部に4自由度の計6自由度を有し、1つのDCモータおよび1つのステッピングモータで全ての自由度が駆動される.また.非線形バネを介して関節の剛性をほぼゼロから無限大まで変化させることが可能となっている.指は複合4リンクに遊星ギアを組み合わせた構造をもち、指の3つの関節の角度が把持物の形状に応じて変化する機構となっている.完成した前腕動力義手の駆動実験をおこない、所与の性能を確認した.
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