研究概要 |
人工現実感の分野において,仮想環境の物体と操作者である人間との間の力感覚の伝達を如何に実現するかが,視覚情報との相乗効果を図る上で不可欠である.そこでは,身体面からの感覚提示の開発と心理面からの感覚提示が大きな課題である. 平成7年度は,試作した力覚提示装置を利用して,渦場とボールの投上・捕球試行の力の場の体験から,人間はどのような印象を持ち,どのくらい内面に影響を受けているかを調べることを重点に行った.これは従来の力覚を扱う研究において人間の内面に関するところは,作業時間や作業軌跡などの外面的特徴を捉えたものが主であるが,VRの目的が人間とコンピュータの関係をより良くするものであるならば,積極的に利用しようとする5感に対して人間の内面的影響を考慮することは重要であると考えている.一連の実験において,このような力感覚の提示における人間性への配慮の重要性を確かめた.また,力提示などの調べにより,より人間の内面性を引き出す力の与え方も重要であることが判った.VRシステムにおいて,より臨場感を高揚することと人間性を豊かにするために,さまざまな力提示をする必要があると同時に,人間の内面性のモデルの構築,即ち,人間が仮想世界の合成された力覚をどう受け取るかという心理モデルの生成を行わなければならないことが実験からわかった. 今回のアプローチでは,力の提示に対してどのような感情が引き起こされるか,及び色々な場面で内面からの力の提示はどの程度必要かを見ることは今後の課題である.
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