研究概要 |
従来以上に多様な仕事をロボットが行えるようにするためには,ロボット機構の見直し,新しい動作原理・制御コンセプトの導入が必要である.本研究では,(1)拮抗駆動関節の特性解析,(2)マニピュレータによる柔軟物体の操作,に関するテーマを取り扱っている.それぞれの本年度の成果は以下の通りである. 1.拮抗駆動関節の特性 空気圧駆動のゴム人工筋を1対拮抗的に配置した関節について,その発生トルク・関節剛性と人工筋内の空気圧との関係式を求め,2つのゴム人工筋の圧力を変化させることにより,所望のトルクと関節剛性を発生できることを明らかにした.スライディングモード制御による実験を行い,これらの特性を実現できることを確認するとともに,以下の特性についての知見が得られた. 関節剛性は2つのゴム人工筋の圧力の和に比例するので,剛性を変化させて,1リンクロボットで衝突実験を行った.剛性を下げると,衝撃力が低下する傾向が認められた.剛性を高くすると,関節へかかる押付力が大きくなるため,衝撃力のバラツキが大きくなるとともに,関節部の摩擦力の影響が大きくなる.剛性の変化幅は人工筋の固有特性で制約され,現在使用中のゴム人工筋では狭い範囲でしか剛性を変化できないことが判明した.これらの実験結果は2リンクモデルによる衝撃シミュレーションが研究をいっそう促進する方法であることを示唆している. 2.マニピュレータによる柔軟物体の変形・操作 種々の製造現場で多くみられるバネ,ゴム,電線などの柔軟物体を変形・操作する作業をロボットで行わせる目的で研究を行っている.本年度は,一端が壁に固定された弾性板バネの他端をマニピュレータのエンドエフェクタで把持し,準静的にバネの先端を目標位置まで移動させる問題を取り上げ,関節駆動トルクのノルムを低減化するエンドエフェクタの軌道計画について考察した.この計画法を考えるにあたっては,マニピュレータの操作コンプライアンス楕円という,新しい概念を導入した.得られた軌道は人が同じ作業を行う場合と同様の軌跡となった.
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