(1)3次元加振台を用いた人体上体系の基礎実験 本研究室で所有している3次元加振台を用いて、座位の人体の加振実験を行った。所有している3次元加振台は、水平2方向と垂直方向の3方向について、同時に独立な加振を行うことができ、また、いずれか1方向のみに加振することも可能である。座面の振動入力として、人体の前後(x)、左右(y)の水平2方向および垂直(z)方向が考えられるが、それぞれ1方向ずつの加振を行い、1方向入力に対する頭部の3方向の振動応答を計測し、合計9個の振動伝達率を計測した。入力信号は、入出力関係を線形化するためにランダム波を用い1〜20Hzを周波数範囲とした。また、振動伝達率とともにコヒーレンス関数も計測し、線形性について検討したが、2Hz以上の周波数領域においては、良好な線形性を有していることが確認された。振動入力のレベルについては、r.m.s.値で0.2Gに設定した。座位の人体のダイナミクスは、一般にその姿勢によって変化するが、本研究では、乗車中の状況を想定し、加振台上に座席を作り、足は足台に載せ座席とともに振動するようにした。姿勢は、特に緊張のない楽な姿勢をとった。以上の条件で、5人の被験者に対して加振実験を行い加速度伝達率を測定した。 実験の結果より、入力方向と出力方向の一致する振動伝達率に関しては、それぞれ、2つずつの共振周波数が確認された。また入力と出力の方向が異なる方向に関しても、x方向とz方向について共振峰が表れており、x方向とz方向の間には動的な連成のあることが明らかになった。このような特性は、5人の被験者のいずれに対しても、ほぼ同様に確認された。 (2)人体上体系の3次元モデリング [1]で行った実験結果を踏まえ、人体上体の3次元モデルを検討した。モデリングのための周波数帯域は、基本的な共振峰が含まれる、1〜15Hzとした。モデルは、並進バネとダンパからなるユニットと集中質量によって行い、2質点6自由度モデルを構築した。このモデルは、胴体部については、並進運動しか起きないが、頭部と胴体部の間には、回転自由度をもたせ、それらを並進ユニットによって連結させた。このモデルは、実験で確認された動特性を、近似的に表していることを両者の振動伝達率を比較することにより、確認することができた。
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