研究概要 |
植物体を構成する葉群間や葉と根の器官相互間,さらには植物集団おける個体間のコミュニケーションを関係論的な観点から論じた例はほとんどない.そこで本研究では,環境応答や形態形成における要素間の同調的現象の有無に着目することにより,コミュニケーションにおける「場」の形成過程について検討した.申請書に記載した研究計画・方法に従い得られた結果は以下のとおりである.(1)カポックの葉群おける葉表面の生体電位変化(AC成分)を長期計測したところ,エントレインメント的な同調現象を示す葉が分散して存在することを見出した.このような同調的現象は葉を切除することによっても起こる.また,電位波形はカオス性を有し,拍子音刺激に引き込まれると,相関次元が役割2.5程度に低下することがわかった.(2)生体電位DC成分長期広域計測システムを用いることにより,自然林の樹木群においては,生体電位変化が同調するグループが多中心的に形成されることを見出した.(3)3次元振動電極による環境応答計測システムを構築し,根の周りに形成される極微弱な電場パターンが刺激(光,重力,障害など)によって解体,再構築されることを見出した.これは電場が外部環境と根をつなぐ自律的なインタフェースとして働くことや地下部の根が地上部の状況に整合した情報を生成していることを示唆するものである.(4)葉と根,花弁など,それぞれの器官の運動を長時間にわたり複数同時計測できる装置を用いて,葉と根のリズム運動を同時計測し,両者が周期約2時間程度で協調的に振舞うことを示した.また,2固体を近接して設置した場合,お互いの根が絡まないように,位相差を伴ったリズムをそれぞれの根先端部が形成することを示した.(5)以上の結果を基に,植物のコミュニケーションにおける場の生成について考察し,情報場の設計に関する二三の知見を示した.
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