本研究では、近い将来における電力系統の構成形態として、従来型の発電設備と基幹送電系統とが上位系統を構成し、負荷とエネルギー貯蔵装置とが多数の下位系統を構成するようなシステムを想定する。そのうえで、各エネルギー貯蔵装置に様々な系統制御機能を担わせることにより従来設備の負担の軽減をはかるとともに、従来設備だけでは難しかった良質な制御を実現しようとするものである。 今年度は、エネルギー貯蔵装置を用いた制御機能のうち、主として電圧無効電力制御方式に関して詳細な検討を行った。主な研究成果は以下のとおりである。 1.従来の電圧無効電力制御方式に関する詳細な分析を行った。従来方式としては、現行方式の中で代表的な調相設備と変圧器タップとの協調制御に基づく個別VQC方式を取り上げた。従来方式では制御遅れなどの問題から、負荷急増時における限界送電電力の増大があまり期待できないことが、シミュレーションによって確認された。 エネルギー貯蔵装置を用いた電圧無効電力制御系設計のための制御対象モデル、ならびに各種のシミュレーションに必要なモデルを作成するための分析を行った。また、電圧無効電力制御に関してエネルギー貯蔵装置との競合が予想される静止型無効電力補償装置のモデルについても、詳細な検討を行い、その特性を明らかにした。 上記の分析結果に基づいて、貯蔵装置と既存設備との協調による電圧無効電力制御方式に関する検討を行った。その結果、エネルギー貯蔵装置を用いた場合でも、電圧偏差を制御量とした比例制御だけでは、負荷急増時の限界送電電力の増大という点で不十分であることがわかった。さらに、積分制御の導入によって限界電力の大幅な増大が可能であることが確認された。
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