本研究では、配電用変電所等に多数配置されたエネルギー貯蔵装置が、負荷とともに多くの下位系統を構成する近い将来における電力系統を想定したうえで、各貯蔵装置が系統制御の中核を担うことにより、将来設備の負担の軽減をはかるとともに、従来設備だけでは難しい良質な制御の実現を目的として実施された。具体的な検討項目としては、貯蔵装置の本来の導入目的である負荷平準化の他に、負荷周波数制御、電圧無効電力制御、系統安定化制御などを取り上げ、各々の機能から見た制御システムの最適化について検討を行った。 分散型エネルギー貯蔵装置を用いた周波数・有効電力制御に関しては、基本的な周波数制御モデルの構築、PID制御の導入による特性改善、及びその評価、周波数制御モデルに基づいた負荷平準化モードの実現、制御モード切替動作時の制御特性の評価などを実施した。その結果、エネルギー貯蔵装置と発電機の協調による最適な負荷周波数制御機能に関する指針を得ることができた。 同様に、分散型エネルギー貯蔵装置による電圧・無効電力機能に関しても、有効電力制御との協調を念頭に置いて、変換器容量制約や貯蔵エネルギー量制約も考慮に入れたうえで、従来型の制御機器である個別VQCやSVCとの比較検討を行った。その結果、貯蔵装置の無効電力出力、変換器容量、貯蔵エネルギー量及びP:Qの最適制御比率は、貯蔵装置を設備していない母線の電圧特性などの系統特性に大きく左右されることを明らかにした。 さらに、過渡安定度向上のための分散型エネルギー貯蔵装置を用いた予防制御に関して、予防制御運用による電力輸送力の限界点向上効果をシミュレーションにより検証した。その結果、過渡安定度向上効果と予防制御に必要なコストとはトレードオフの関係にあるが、貯蔵装置の適切な運用により、制御の選択の幅が拡がることを明らかにした。
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