真空中の絶縁破壊現象を解明することは、電力系統で用いられる真空遮断器、高エネルギー物理の実験で用いられる加速器等の信頼性の向上と、装置の小型化において非常に重要である。従来行われている絶縁破壊時のガス分析では、絶縁破壊部分からの放出ガスと、真空容器壁からの脱離ガスの区別が必要であった。以上のことより、本研究では、指向性のあるイオン化室を備えたガス分析計を超高真空絶縁破壊試験装置に設置し、絶縁破壊時にその破壊部分から発生するガスを分析し、絶縁破壊の発生、および、絶縁破壊を繰り返すことにより絶縁破壊電圧が向上するコンディショニング効果との関係を調べた。 まず、電極自体に吸蔵ガスが少ない無酸素銅電極を用い、電極の表面処理の影響について調べた。その結果、電極表面の凸凹を少なくする電界複合研磨やダイヤモンドタ-ニングを施すことにより、コンディショニングに要するの絶縁破壊回数が少なくなることが分かった。さらに、熱処理を施すことにより、コンディショニング後の絶縁破壊電圧の更に向上した。これは、熱処理が電極表面の歪みの緩和と電極に吸蔵されているガスをたたき出す効果があると考えられるが、実験の結果吸蔵ガス量の影響が主であることを明らかにした。 次に、真空機器内で電極の支持や導体を機器内へ導入部分に使用される絶縁体の表面にそって発生する沿面放電に関して、絶縁破壊と放出ガスとの関係について調べた。その結果、沿面絶縁破壊を繰り返すことにより、絶縁体表面の吸着物である酸素や炭素の脱離が認められ、この脱離による表面の清浄化が沿面放電電圧の向上に関係していることを明らかにした。
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