本研究では、補助共振形転流ポール形電力変換器の最適化に向けて必要となる、下記の課題について研究をすすめ、所期の実績をおさめた。 1.補助共振転流ポール形電力変換器の中性点電圧抑制制御法の開発 中性点電圧の変動は、転流失敗を誘発し電力変換器の運転継続を不能にする。その変動を抑制する方法として、二つ零電圧ベクトルを使い分けるスイッチング制御法を提案し、その有効性を実験により検証した。 2.電力変換効率の比較評価 ハードスイッチング方式とソフトスイッチング方式の効率比較評価用にインバータ装置を試作し、2.5kW出力時に補助共振転流ポール形電力変換器によるソフトスイッチング方式の方が、ハードスイッチング方式より、約0.6%電力変換効率が向上することを確認した。 3.電磁ノイズの比較評価 上記インバータ装置を利用し、試作アンテナにより電磁放射ノイズを計測し、比較評価を行った。その結果、意外にも、ハードスイッチング方式とソフトスイッチング方式との間には、電磁放射ノイズに顕著な差異がなかった。その原因は、ソフトスイッチング方式である補助共振転流ポール形電力変換器では、ハードスイッチング方式にはない補助回路が大きく、それが電磁放射ノイズの新たな発生源になるからであると考えられる。従って、補助回路を含めて電力変換器を以下にコンパクトに構成するかが今後の検討課題となった。 4.損失の少ない共振用インダクタの構成法の検討 電磁ノイズの放射を抑制するため共振インダクタは、鉄心入りとする必要がある。各種鉄心材料を使用した共振インダクタを試作し、鉄損抵抗の測定を行った。その結果、比透磁率の小さいフェライト鉄心を5段以上重ね最大磁束密度を低く抑えることが有効であることを検証した。
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