発電用ダム上流域における水資源を有効に電気エネルギーに変換利用するためには、降雨による流量増加の時間変動を精度良く予測することが必要である。本研究では、河川出水予測のためのニューラルネットワークシステムの構築を行い、本目的に適したシステムの構成について検討を行った。具体的に、大井川水系畑薙第一ダム上流域および飛騨川水系高根ダム上流域におけるケーススタディーを通して、次のことを明らかにできた。 1.3層の階層型ニューラルネットワークを用い、現時点までに観測された降雨量および流量を入力とし、1時間後の河川流量を出力とするシステムを構築した。 2.ニューロンの入出力関数として、すべてを一般的なシグモイド関数とするより、線形関数を用いた方が予測精度が向上する。 3総降雨量別に学習したシステムを用いることにより、流量予測精度が向上する。 4.ニューラルネットワークシステムの入力信号として、累積雨量を加味すれば、さらに予測精度が向上する。 5.ニューロンの連携を線形部分と非線形部分とに分割することにより、予測精度の低下を招かずに学習時間の短縮が実現できる。 また、河川流域における降雨の空間分布のオンライン観測として、気象レーダデータの利用が考えられる。本研究では、レーダデータから地上雨量分布への変換のためのニューラルネットワークシステムを開発した。この場合、ダム上流域の標高を考慮して学習を行うことにより、地上雨量分布を精度良く推定できる。
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