本研究は、大規模系統における階層化構造の確立を目指し、系統運用と運用計画の様々な課題について、適用されるべき手法を明らかにし、幾つかの典型的な問題に対して、具体的な階層化アルゴリズムを開発しようとするものである。初めに、系統の瞬時運用問題の内状態推定機能に着目し、地域分割手法に対して検討を加えた。当初の見通しの通り、階層システム理論における分解協調原理の内、目的協調法の適用によって優れた収束特性が得られ階層構造の構成法が明かとなったが、更に、各部分系統において共分散行列の対角近似を実現する簡略化手法により、地域間協調のための情報伝送量が大幅に削減されることとなった。 系統の短期運用計画の典型的な例である、日間の発電機負荷配分問題、特に出力変化率をも考慮するいわゆる動的負荷配分決定手法に関しては、各発電機を逐次最適化する方法、またクーンタッカー条件の有効利用により、極めて実用性に優れたアルゴリズムを開発できた。従来法では厳密解を求めるために複雑なアプローチを強いられており、実運用に十分耐え得る方法が基本的には完成したものと考えている。更にこの方法は、エネルギー貯蔵システム等を含む運用計画に際し、モデル協調法の適用に結合されることとなる。 最後に発電機の起動停止計画に対しては、時間分割の後協調を図る基本構想を検討しており、特に1週間程度の短期計画については、やはりモデル分割に基づく具体的な階層構造が完成した。中、長期の計画に対しては、当初ファジィ理論適用の検討を加える予定であったが、モデル分割時に整数計画問題特有の問題が生じ、その解決アルゴリズム、及び時間分割時の協調法の詳細が新たな課題となっている。なおニューラルネットの適用に関し、負荷配分問題を例としてホップフィールド型モデルについても基本的な考察を加えることができた。
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