研究概要 |
Maxwellの式を直接解くことによって送配電系統に発生するサージ過電圧を求めるTEPCO(Transient Electromagnetic Field Propagation Code)を開発することを目的としている。これまで線形素子R,Lを含む解析コードを完成したが、本年度は代表的な非線形現象であるフラッシオーバ現象を扱うことができるようにコードの拡張を行なった。非線形特性をTEPCOに取入れる場合、2つの問題点があった。第一は各時刻毎に電流に関する連立一次方程式を作成し、解く必要があることである。これは計算時間の増大をもたらすが、要素電流のrenumberingによって係数マトリックスの再作成を最小にすることによって10%程度の計算時間の増大にすることができた。第二はフラッシオーバの長ギャップ放電シミュレーションを行なう必要があることであり、本年度はリーダ進展モデルを採用した。今後、モデルの評価および改良を進める予定である。 解析法の有効性を実証する目的で、実験室内サージ特性を調べられるように約1/60の縮小モデルを送電線路鉄塔と引き込み鉄構、架空地線、2回線電力線にて構成した。雷撃は最大の雷サージが侵入する変電所からの第一鉄塔に生じると想定し、遅延線路で雷撃路を模擬し、また変電所機器はガス絶縁母線を70Ωの抵抗で模擬している。実験結果より、電力線に表われるサージは鉄塔電流と架空地線電流によって誘導される成分のみでは説明できない大きな電流が表われることが明らかになった。引き込み鉄構の接地抵抗を変化させると変電所に侵入するサージ電圧の極性とその大きさが変化する現象がみられることから大地へ流入する雷撃電流の影響によることが予想される。今後、EMTPによる回路解析やTEPCOにて解明する予定である。
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