研究概要 |
Maxwellの式を直接解くことによって送配電系統に発生するサージ過電圧を求めるTEPCO(Transient Electromagnetic Field Propagation Code)を開発することを目的としている。これまで線形素子R,Lを含み代表的な非線形現象であるがフラッシオーバ現象を扱うことができる解析コードを完成したが、本年度は解析法の有効性を実証する目的で、実験室内でサージ特性を調べられるように製作した約1/60の縮小モデルである送電線路鉄塔と引き込み鉄構、架空地線、2回線電力線の実験結果との照合を行った。雷撃は最大の雷サージが侵入する変電所からの第一鉄塔に生じると想定し、直線導体線路で雷撃路を模擬し、また変電所機器はガス絶縁母線を70Ωの抵抗で模擬している。電力線に表われるサージは鉄塔電流と架空地線電流によって誘導される成分のみでは説明できない大きな電流が表われる実験結果と同様な結果が解析でも得られた。引き込み鉄構の接地抵抗を変化させると変電所に侵入するサージ電圧の極性とその大きさが変化する現象より電力線の変電所引き込み法が重要となることが判明した。また、逆フラッシオーバの原因となる鉄塔のサージ特性についても解析を行い、従来の電磁界理論の問題点を明らかにし、さらに接地特性の重要性についても研究成果が得られた。 さらに本研究において時間領域のサージ解析法の問題点としてループ導体が存在する場合、低周波特性が悪化することが判明した。これは2つの原因による。第一は物理モデルが導体表面の抵抗が0という完全導体を仮定するためループに誘導された電流に対して損失機構がなく永久電流が発生することがある。また第二の原因は連立一次方程式の係数マトリクスの特性によることが判明した。その対策としてはループ内に微小抵抗を挿入することであるがどのような値にすればよいか、またループ内のどの位置であればよいかは未だ明らかでない。
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