近年、石油科学工業の著しいまでの発達にともなって、各種合成高分子材料が開発されてきた。これらの材料は電気的、機械的、優れた特性を持つため電力用ケーブル・電力用コンデンサ等高電圧機器の絶縁材料として用いられてきた。しかしながら使用範囲の拡大や長期化にともなって絶縁材料に内部劣化(電気トリ-、水トリ-)が生じ、そのために電気的特性が悪くなり信頼性にも問題が生じてくる。高分子絶縁材料であるポリエチレン、ポリプロピレンを試料として用い、これらを溶融し冷却したときに生じる高次構造(球晶、ラメラ晶)と電気トリ-、水トリ-の関係を求めた。 その結果、つぎのような事が明らかになった。 (1)電気トリ-は球晶内、外の非晶質部分においてのみ発生し、非晶質部分を進展し、球晶に衝突した時点で分岐を行いさらに進展を続ける。 (2)球晶分布状態が疎らの試料の場合、トリ-発生電圧は球晶分布状態が密の場合より高い。 (3)水トリ-は球晶内では発生せず、球晶外の非晶質のみで発生し、進展する。 (4)水トリ-の形状は発生した後、直線状に進展するものがある。 (5)電気トリ-の進展及び高次構造との関係についてシミュレーションする事が出来た。今後は3次元表示方法について検討する必要がある。 ポリエチレンの場合、球晶の分布状態を制御する事が困難でほとんどの試料が球晶の飽和した状態になる。そのため、球晶とトリ-の関係についてはさらに検討する必要があると思われる。
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