本研究では電子写真方式に基づく複写機、レーザプリンタの一成分現像方式のフルカラー化を実現することを目的に、トナーをエレクトレット化して、その基礎特性を把握し、問題点を検討した。はじめに、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン、等を主成分とするシアン、イエロ-、マゼンタの一成分カラートナーを試作し、粒度分布、見かけの抵抗率、帯電特性、等の基礎特性を評価した。その結果、これらのトナーは通常の二成分現像剤のトナーとほぼ同様の基礎特性を有することが判明した。ついで、コロナ帯電、磁性体粒子との摩擦帯電、電子注入、の3方法によりこれらのトナーをエレクトレット化し、その電荷保持能力を中心に、エレクトレットトナーとしての基礎特性を検討した。 コロナ帯電法によるエレクトレット化の場合、正、負、両極性とトナーはエレクトレット化され、電荷減衰の時定数はかなり長い(20時間以上)ことを確認した。ただし、コロナ帯電時間は5秒程度が最適で、それより短い場合は帯電量が小さく、それより長い場合は電荷の減衰が若干速くなることも判明した。 摩擦帯電によるエレクトレット化の場合は、トナーはエレクトレット化されるが、その電荷保持時間は、コロナ帯電の場合より短い傾向が認められた。 電子注入法によるエレクトレット化では、真空中においてトナー層に電子シャワーを浴びせたが、電荷を得るのは表面層のトナーだけであり、その電荷の減衰も摩擦帯電の場合よりさらに短いことを確認した。 以上の研究を通じて、トナーのエレクトレット化にはコロナ帯電を利用するのがよく、その電荷は長時間保持され、エレクトレットトナーを電子写真システムに応用できる可能性は十分あると判断した。
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