強磁性体が非磁性金属中にグラニュラー状に析出した物質において、巨大磁気抵抗(GMR)が観測されている。それらは、磁気ヘッドを高性能化し、現在の磁気記録密度を大きく高めることができるのもの期待されている。本研究では、独立に生成した強磁性体微粒子を他の金属中に分散させながら薄膜化できる新しいプロセスを開発し、良好な特性を有するグラニュラー磁性体を作製することを目指している。本年度の研究結果をまとめると次のようになる。 1.ガスフロースパッタ法を利用した微粒子分散膜作製プロセスの改良を行った。 用いた微粒子分散膜作製プロセスは本学独自のものであり、微粒子の分散量を増すと膜密度が低下することと、分散させる金属微粒子が酸化する、という2つの大きな問題があった。前者の問題は、プラズマ中のイオン衝撃を利用することにより改善でき、後者の問題は、技術的に解決できることを実験的に明らかにした。そして、平均粒径が4nmから8nmの金属微粒子を10%程度分散させた強固な金属膜を作製できるプロセスが構築できた。 2.Co微粒子を分散させたCu薄膜を作製し、その磁気抵抗を詳細に調べた。 前項で述べたプロセスにより、平均粒径が約4nmのCo微粒子を分散させたCu薄膜を作製し、その磁気抵抗特性を詳細に調べた。その結果、その磁気抵抗は巨大磁気抵抗であることが明らかになった。その変化量は1%程度の小さなものであったが、その主原因がCo微粒子の酸化にあることが推察され、技術的に改善できるものと考えられる。これら結果は、分散させる微粒子をパ-マロイなどのソフトな物質に置き換え、また装置の清浄度を向上させることにより、小さな異方性磁界を持った応用上有用な磁気抵抗材料が合成できることを示している。
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