グラニュラ状の強磁性体が非磁性の金属中に析出した物質において、巨大磁気抵抗(GMR)が観測されている。しかしそれらは、合金の熱的相分離を利用して作製されるため、粒径等を制御することが難しい。本研究では、独立に生成した強磁性体微粒子を他の金属中に分散させながら薄膜化できる新しいプロセスにより、粒径と濃度を独立に制御したグラニュラ磁性体を合成し、GMRの導出とそのメカニズム解明を目指した。得られた研究結果をまとめると次のようになる。 1.ガスフロースパッタ法という本学独自のスパッタ法を利用することにより、CoやNi-Fe合金の超微粒子を分散させた金属膜が作製できることを明らかにした。2.分散させる超微粒子としてCo及びNi-Fe微粒子について調べたところ、平均粒径を20から80Å程度制御できることが明らかになった。3.マトリクス金属としてCu及びAgを採用し、それらの微粒子を分散させた薄膜を作製し、その構造と磁気抵抗を調べた結果、次の点が明らかになった。(1)超微粒子が5%程度以下の時は、良好な分散製が推察された。(2)分散量を増すと膜密度が低下するとともに、金属微粒子が酸化し易くなることが分かった。(3)これらの分散膜の磁気抵抗は、GMRであると結論された。(4)超微粒子の密度が増すと微粒子の磁化がブロックされ強磁性的になるが、その状態でもGMRが現れることが明らかになった。このことは、本プロセスにより粒径の小さな磁性体超微粒子を密に分散させた金属膜において、低磁場で変化率の大きなGMRが実現できることを期待させるものである。特にこの知見は、本研究によって初めて得られた重要な結果である。
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