初年度に当たる平成6年度は、吸着LB法を発展させた薄膜形成法、すなわち、導電性基板と水相間に電圧を加える電圧印加LB法を用いて作製にた分子超薄膜中における吸着分子の量と分子配列制御性について調べた。特に、膜内の自己配列の確認と分子置換基数に起因する吸着分子数比の制御性を利用した自己構築的秩序構造膜を実現を目的として実験を進めた結果、以下のような成果を得た。 1)既存の成膜装置を使ってITO(idium-tin-oxide)導電性基板上にTCNQ(テトラシアノキノジメタン)-トリフェニルメタン色素(ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等)系電圧印加LB膜の成膜実験を行った結果、LB膜累積時のバイアス電圧により、長鎖TCNQおよびトリフェニルメタン分子の配向と吸着量が制御できることがわかった。 2)赤外吸収(FT-IR)等による電圧印加LB膜の評価を行った結果、これらの分子配向、分子間の電荷移動量もLB膜累積時の印加電圧により、ある程度制御できることが明らかとなった。 3)基板上の電圧印加LB膜をSTM(走査型トンネル顕微鏡)、AFM(原紙間力顕微鏡)で評価を行ったが、現在用いているITO基板表面の凹凸が累積されるLB膜の膜厚に比べ大きいため、分子オーダーでの評価を行うためにはシリコンやHOPG等のより平坦な導電性基板を使う必要があることがわかった。 現在、新規に導入した電圧源、電流計を用いて、電圧印加LB膜成膜中の微小電流モニター、および、累積膜のサイクリックボルタノメトリーによる酸化-還元電位との関係等の基礎的実験を進めている。
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