平成7年度では、電圧印加LB法を用いて種々の分子種によるヘテロ超薄膜を形成し、成膜条件と薄膜形成素過程について詳細に調べた。また、従来設備である光電測定装置とフォトルミネッセンス装置に新たに入射角可変型の光学測定試料台を導入し機能性分子の分子配列状態を詳細に調べた結果、以下のような成果が得られた。 1)ITO基板とシリコン基板上に形成したアクセプタ性分子(TCNQ等)-ドナー性分子(PPD等)吸着LB膜において比較的明確な電圧印加効果が確認された。しかしながら、分子オーダの吸着現象をトンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)で詳細に調べるには、基板の平坦性と基板処理について、さらなる検討が必要であることが今後の課題として残された。 2)電圧印加吸着LB膜を紫外・可視、赤外吸収、反射スペクトル、さらには偏光フォトルミネッセンッス測定を行った結果、LB膜形成条件、分子吸着条件によって、発光・吸収スペクトルに変化が現れることが判明した。しかしながら、機能性分子からのスペクトル変化にはドナー性-アクセプタ性分子間相互作用以外に基板との相互作用や分子自身の経時変化が大きく影響している可能性があり、分子オーダでの吸着、配列との相関を明確に結論するには至らなかった。 以上のように所期の目標に対して明確な結論が得られなかった部分や新しい検討事項も出てきたが、概ね計画通りの研究成果が得られた。本研究で得られた成果は電圧印加LB法が有機電子デバイスを実現する上で重要な作製手段と成り得ることを示したものである。
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