研究概要 |
高温超伝導酸化物は異方性が強く,超伝導コヒーレンス長が結晶のc軸方向に較べa,b軸方向の方が長い.そのため超伝導積層形SIS接合を作製する場合,薄膜結晶のa軸が基板表面に垂直であるいわゆるa軸配向薄膜を電極としたSIS接合をえることが必要である. 本年度は簡便な成膜法である基板ホルダバイアスRFマグネトロンスパッタ装置を用いてセルフテンプレート法によりYBa_2Cu_3O_x(YBCO)酸化物薄膜および積層膜を成膜し,その配向性をX線回折装置で調べ,その電気的特性を調べた. まず,手始めにa軸配向YBCO薄膜を得るための最適条件を調べた.基板にSrTiO_3,NdGaO_3,YAlO_3,MgOを用い,良く調べられているSrTiO_3上のa軸配向YBCO薄膜との検討を行った.a軸配向度[=I(200)/{I(200)+I(005)};ただしI(abc)は両指数(abc)からのX線回折強度]が0.95以上のものをいれると,現時点ではTc>60Kの薄膜が得られている. これらのa軸配向YBCO膜の上にバリア層としてSrTiO_3,PrGaO_3を堆積した.そしてYBCO薄膜とバリア層との状態を知るためにバリア層のうえにAuを堆積し,SIN接合を形成し,その接合の電気的特性を検討した.その結果,トンネル的な特性を得ることはなかなか困難であるが,ピンホールの影響の少ない特性を得ている.しかしながら,絶縁層の厚さがまだ厚すぎるのが今後の課題である. 今後はa軸配向YBCO薄膜の更なる高品質化とともに,バリア層の検討とSIS接合の作製条件の最適化をはかりたい.
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